春ウコンには肝炎ウイルスに効能がある
現在、確認されている「ウイルス性肝炎」には、A・B・C・D・Eの5種類が判明していますが、「B型」および「C型」の肝炎ウイルスに感染した場合にのみ、「肝臓ガン」に進行すると見なされています。
世界におけるガンのデータをつぶさに検討してみると、肝臓ガンはB型またはC型の肝炎ウイルスに感染した結果として生じる腫瘍(しゅよう)と見なされています。
わが国で問題視されている肝炎ウイルスもまたB型およびC型で、両者ともに血液を介して感染しますし、唾液や精液からも移る可能性があります。
B型およびC型の肝炎は、両者とも慢性化します。
「慢性肝炎」では、肝細胞の破壊がそれほど多く起こりませんが、ゆっくりと進行するため、肝機能障害が長く続いて、門脈の周辺や中心静脈が線維で結合される結果、肝臓がしだいに硬化され、やがて「肝硬変」を招いて、その過程で肝臓ガンが発生します。
「A型」はウイルスが水や食物といっしょに口から侵入してくる経口感染で、昔からあった流行性肝炎ですが、わが国では発症数が著しく減少しています。
A型に感染すると、脱力感を伴ったり、黄疸が出たりしますが、だいたいは「急性肝炎」で終わることが大半で、A型肝炎で慢性肝炎から肝臓ガンに至ることはまずありえず、正しい治療をすれば命を失うことはありません。
A型は1度感染すれば、終生免疫”をつけて、再感染することはありません。
急性肝炎の場合、肝細胞に肝炎ウイルスが侵入してくると、生体での免疫機能が慟いて、ウイルスを異物として取り除こうとするリンパ球の働きによって、ウイルス感染を受けた肝細胞が破壊されるために肝炎が起こります。
「E型」はA型に近いウイルスで、北インドやネパール周辺、またゴビ砂漠やモンゴルに見られるタイプで、わが国には存在しない型です。
ただし、昨今は国境を容易に越えやすくなっており、国境の不明確なボーダーレス社会と化しているので、日本人がその方面に旅行したとき、まれに感染を受けて、A型肝炎に似た急性肝炎を起こす例があるので、あながち無視もできません。
E型もA型と同じく経口感染です。大便の中にウイルスが排泄されるので、大便に汚染された水さえ飲まなければ、A型やE型に感染することはありません。
「D型」も非常に少ないウイルスで、日本ではわずかしか例がありません。
D型は単独では存在せず、B型と重感染していますが、どのような経路で感染するのかわかっていません。
遺伝的に肝臓ガンを懸念する人が、発病以前になんとかこれを予防したいという願いから、着目しているのが生薬のウコンです。
春ウコンに発ガンの促進を抑制する薬効があると考えられているからですが、そうした働きがわかってきたのはここ10年くらいの間です。
したがって、肝臓病患者に一定量の春ウコンを飲ませていけば、肝臓ガンになりにくい体質に改善されるのではないかと期待されているわけです。
しかし、春ウコンによるガン化抑制の薬効は、まだ完全に証明されている問題ではなく、現段階では可能性を持っているとしか申せません。
とはいうものの、ウコンが有する発ガン促進物質を抑制する働きによって「慢性肝炎→肝硬変→肝臓ガン」に進む過程で、ガン化を食い止めることが期待されており、ただいま研究が進められている段階です。
肝臓という臓器は、消化器の働きを誘発するために胆汁を作り出すことをはじめ、必要に応じて、生体に吸収された栄養素を同化したり、貯蔵したり、害になるものを解毒するなど、人体が生命を維持していくうえでの不可欠な、ありとあらゆる生化学処理を営んでいます。
また、春ウコンの薬効の1つに、胆汁分泌亢進作用がありますが、春ウコンのこの働きが肝細胞を活性化させ、さらに肝臓の機能を強化してくれるので、とうぜん肝臓病の治療に対していい結果を招くと考えられています。
肝臓は「沈黙の臓器」と言われるとおり、その異変になかなか気のつきにくい1面がありますが、人体の総合化学工場に喩えられる臓器ですから、あだやおろそかには扱えません。